大同小異

昨日は、10時にハーグ市内のイエナプラン校へ訪問し、2歳半からの就学前教育の教室と4−6歳の幼児クラスを視察して、13時から同じくハーグ市内のモンテッソーリ校の観察。その後、15時からハーグの教育サポートセンターHCO(http://www.hco.nl)を訪ね、ハーグ市内で行われている様々な就学前教育の支援内容などについて話を伺った。

まず午前中のイエナプラン校では、サークル対話を中心に子どもが自らで主体的に判断できる能力を身につけるために様々なコーナーや動機付け、キッカケ出しなどを多くの選択肢の中で保障している環境を用意していた。

先生もそれぞれに子どもの特性を大事にしているのが分かる立ち位置に立っていて、それぞれの子どもの必要なだけの援助を行っているのが印象的だった。

日本ではギビングツリーの保育では、そのような環境が標準だと私たちは思っているので特に驚くことはなかったのだが小学校でもそのままの環境を保証しそれが発展しているのを見ると、やはりEU諸国の方が人権でも民主主義でもしっかりと議論されてそういう環境になっているのだろうと感じることができた。

この学校のもう一つの特徴は、移民が多いこと。学校全体の子どもの半数以上がトルコやモロッコイスラム圏やアジア圏、アフリカなどからの移民で成り立っていること。写真を撮っていたらまるでどこかのアニメで見たような様々な国の人の顔があって、世界市民という言葉を否が応でも感じずにはおれないような環境があった。

ひょっとすると21世紀は文化文明、言語や価値観などのボーダーも超えてそれぞれが地球の一市民としてどうやって力をあわせて危機を乗り越えていくかを市民レベルでもやっていく時代が来るのかもしれないと彷彿させるような視察になった。

ここでは、言語がまったく通用しない子どもが半数以上あり、これからどうやって言葉を習得してもらうか、また保護者との会話や文化の違いをどう認め合うかなど相当な難題に対して官民一体になって乗り越えている感じがした。

日本では、コンビニなどもそうだが中国人や韓国人の方々もたくさん入ってきている。アジア系は見た目が変わらないのでそんなに気にしていないが、ちゃんとそれぞれの宗教観、文明観、価値観などをそのままいい加減にやっているとそのうち大変な歪みが発生して危険な事件が起きるのではないかと心配になる。

日本人は島国で日本人しかいないところで育ってきたので、その辺を曖昧にしたいのだろうが移民が日本人と同じくらいの数になったらきっと大変になるだろうなと思う。

長くなるので次の学校に移る。

次の学校は、完全なるモンテッソーリの学校になる。先週もアンネフランクのモンテッソーリ学校を視察したのだが教材の種類の多さに本当に驚かされる。また、それぞれが自分の課題を選択して同じことを違うアプローチで到達させるやり方もよくここまで増やせたものだと感心できる。

日本では、個々で一人引き籠って学ぶ方法がたくさん用意されている。宿題だって大変な量毎日出るし、基本的には一斉画一なのだからほとんど自分でやるしかない方法を選択させられている。日本では、やっぱりみんなで関係性を大事にするような方をもっとしっかりと充実するのが先ではないかと改めて考えさせられる機会になった。

関係性という意味では、この学校でもサークル対話などを充実させていて関係性を大事にする協同的なものも最近ではたくさん増やしているのだそうだ。

最後に、ハーグ教育センターに訪問して幼児教育の専門家とアドバイザーの2名にどのようなことをやっているのかなどを伺った。

日本では研修は、教育、保育団体などが行政より委託を受けてやることがほとんどになっている。ここでは、そういう団体が民間化されていて、それぞれの地域の学校のサポート研修やコーチング、指導などを行っている。

この国では、そういう指導を受けていなければ補助金を受け取れない制度になっていて研修は必須になっている。

ただその研修の中身は選べるようになっていて、そこにそれぞれのサポート機関が入り込み提供するようになっている。

ただほとんど行政側のニーズを中心に動いているので、本当の意味での現場が困っている目を向けたくない教育者が陥りがちな人為的ミスや人間関係ストレス、その他、理念やマネジメントなどの複雑なものには触っていないような感じがした。

たとえば、学校教材の方向を決めたり、業者が持っている遊具やその他の情報を提供してあげたり、全体の親へ対して子育ての重要性を広報したりなど教育団体と同じように全体へ向かってのニーズにこたえているような感じの機関だった。

一日を通して実感したことは、お金の流れに沿ってそれぞれのやることの範囲がある程度決まってくる。昨日のように行政の管理までも逃れて自由にしたいのならばお金をもらうことはできない。

お金をもらうことである程度、全体に対しての国家としての教育とそれぞれの学校が持つ理念としての運営との狭間にいろいろな機関や企業がある。

私たちも、それぞれの持つそれぞれの本質的な良さや質を高めながら日本の子どもたちにもっとも効果的な方法を提供提案できるように、これからも和魂洋才の感覚を大事に帰国後もしっかりと取り組んでいこうと思う。

このような幅広い内容の視察へ導いてくれたリヒテルズ直子さんに深い感謝。