郷里の食文化

福岡の郷土料理にもつ鍋があります。以前、東京に住んでいるときにもつ鍋を食べたことがありますがもつが美味しくなくびっくりした記憶があります。故郷や地元で食べた方が鮮度も味も抜群です。特に私は炭を使いますし、水も井戸水などだしもこだわりますから遠方からの来賓のおもてなしで喜ばれています。

このもつ鍋の福岡での歴史はそんなに長くはありません。もともとの起源は、終戦して間もないころに当時炭鉱で働いている朝鮮半島の人々がもつとニラを一緒にアルミ鍋で炊き、醤油味で味付けして食べていたところからだといいます。もともと朝鮮半島の料理はチゲもですが、ニラや肉や魚の内臓をいれて煮炊きします。日本では、動物の内臓はもともと食べないことが多く元々は捨てるものであるとされていたことから関西弁で捨てるものを「放るもん」ということから「ホルモン」と呼ばれるようになったといわれます。私たちの郷里でも、捨てることを放るといいますから関西弁ということでもないのかもしれません。

内臓を食べる料理というのは世界中にあり、栄養価が高く健康にも優れているということもあります。それに戦後の食糧難で、どんなものでも大事に食べて健康を保とうとした工夫からもあります。もともと薬膳鍋のような効果もあり、消化にもよく、疲労回復や美容効果もあるといわれます。

もつ鍋に使うそれぞれの食材が栄養豊富なので、もつ鍋一食で摂れる栄養の種類も多く一つの鍋で多種類のビタミン・ミネラルを一度に摂ることができる優れものです。

その土地にある歴史を感じながら食べるということを私たちはつい忘れがちです。本来は、その土地に何かの文化が創造されたからこそ食文化も誕生します。その歴史の上に今の私たちがいることを忘れてはいけません。

今、私たちが住んでいる町はそれだけ文化が誕生し今でもその文化を伝承し、さらにもう一歩、その文化を甦生し創造していくことでいつまでも食文化も発展していくように思います。食べるということは、本来は文化を伝承しているということです。

子孫たちへ食文化の誇りも伝承していきたいと思います。