水のある暮らし

ここ数年は、寒暖差が激しく英彦山においても突然に積雪がということがよくあります。昨年は、配管が凍結で破損したことなどもあり早めに対応してきました。もともとこの配管が破裂するのは、科学的には水が氷ることによって約1.1倍の大きさに体積が膨張するからです。

水というのはとても不思議で、よく考えると蒸発したり凍ったり、あるいは混ざり合ったりあらゆるものに変化していきます。そしてそのどれもが不思議なものです。

例えば、水は体積で自分よりも密度が高いものが沈みます。そうではないものが浮かびます。それに浸透圧で様々なものの溶け込んでいきます。植物をはじめ私たち人間もこの水によっていのちは巡り、水が通ることによって循環を促します。

水を知ることが、何よりも山の暮らしには必要なことです。英彦山の宿坊では井戸を甦生し、井戸を利用しています。水道も来ていますが、今ではほとんど井戸が中心です。

井戸水は年中一定の温度を保たれています。それは地中の水を使うからです。この地中の水は凍っておらず常に地下を流れ続けています。植物たちもこの地中の流れている水を使うから冬も活動を続けています。

氷河期を乗り越えてきた生き物たちは、ほとんどがこの地中の熱によって守られてきました。火を使わなくても温かい温度を確保できる地中は、私たちにとっては何よりも有難く、また水が動ける状態であるから私たちも生きていくことができています。

この水が凍らない状態をどう保つかということに知恵が必要です。宿坊はすでにかなりの冷え込みで、冬の厳しさがますます家全体に響きます。梅雨から夏の湿気が嘘のように今度は激しい乾燥がはじまります。厳しい冬を乗り越えるために、雪国と同じような水を絶やさない生活がはじまります。

都会にいれば、便利な生活の中でそんなに水のことを真摯に向き合って大切にしようとはなかなか思えないものです。環境の力というのは偉大で、学ばなくても自然にその環境によって意識も感性も磨かれていきます。

子孫のため、先人からの教えを伝承するためにも水のある暮らしを繋いでいきたいと思います。