死から観た世界~一期一会~

昨日はさいたま市中央区にある全国の伝統や風習をアレンジした歳時の室礼によるもてなしで有名な国登録有形文化財の屋敷にて会席料理店「二木屋」を営む小林玖仁男様にお話をお伺いすることができました。

以前から小林様の著書「あの世に逝く力」を拝読していたこともあり、そのお話を中心に今回は私たちに向けてご講演をしてくださいました。小林様は間質性肺炎という不治の病を持ち、その中で死生観を見つめられました。そのお話はこの先もずっと生きているだろうという楽観的な視点ではなく、必死という死の側から観た視点でお話をしてくださいます。

私もかつて4回ほど死ぬような機会があり、一期一会で生きることの大切さ、日々を生き切ることの貴重さなどを感じたこともあり、共感することばかりでした。

小林様のお話で最も印象に残ったのは「今日が最期として生きると楽しくなる」というお話でした。「いつまでも先のことがあると思っている人はまた明日があると思っている。しかし死ぬということが分かれば今日が最期だと思えてくる。するとこの瞬間瞬間を楽しみたいと思ってくる。死が近づくにつれて毎日が楽しくなってくる。」というお話でした。

本当は毎日は同じ日など発生することもなく、自分の思い通りに一日が過ぎていくわけではありません。この二度とない一日をどのように生きていくか、それは言い換えるのなら明日死ぬかもしれないと思ったらどれだけこの今を大切に生き切るか、それが転換されていくのです。

主体性や自発性というものは、将来のことを不安視したり過去のことに後悔していたらどんどん減退していくものです。よく今此処にという言葉もありますが、それは死が身近にあって死を受け容れているからこそ顕れる現実であろうと私は思います。

私の座右の一期一会も、二度とない人生、無二の邂逅だからこそ何よりも尊くいただいたご縁を大切に過ごしたいと思うから毎日を必死に一生懸命に生きていくのです。もちろん、人間だから疲れるとかいやだなとか、なるべく避けたいなというものもあるのでしょう。しかしもしも死が迫って来ているとしたらそんなことを気にしなくなるものです。

自分の選択肢の中で如何に日々を楽しむかはこの死生観、必死という感覚をつかむことにあるように思います。人はご縁や運命や定めを受け容れるとき、どうしようもない現実に感情が揺さぶられます。しかしそれをきっと善いことになると信じて福にできるのはこの今の生き方や生きざまがブレていないからのように思います。

与えられた自分の生を生き切るということは、本当に難しいことだと感じますがだからこそ人生は深い学問の醍醐味に出会えるようにも思います。その後、クルーたちと一緒に会席をいただきましたがこの一期一会の意味を改めて実感した一日になりました。

「おもてなし」の心についても、小林様と二木屋の丸ごとの生き方を通して学び直していきたいと思います。ありがとうございました。

  1. コメント

    年の瀬をバタバタと過ごしていますが、「今日が人生最後の日」となっても、まだ自分は、いつもと同じようにしか生きられない気がします。そういう意味では、まだ「死生観」が確立できていないのかもしれません。「一日の生き方は、一生の縮図である」と言われますが、焦って終わることのないように、「今、ここ、私」を生ききりたいものです。

  2. コメント

    グリコのCMで子どもは1日400回笑い、大人は1日15回しか笑わない、そんなことを言っていました。小林様もずっとニコニコされ、死期が近いことを感じさせない、だからこそかバイタリティーも感じました。無い物ねだりや不平不満ではなく「今日は最高だった」といつも笑っている生き方、死に方を目指していきたいと思います。

  3. コメント

    変な表現にはなりますが、二木屋さんの「穴あきご飯茶わん」は、お米が最後までそのお米としての生を全う出来るように思いやった末の、小林様の環境設定なのではないかとも思えます。それは子どもに対してだけではなく、自分自身に対しても生を全うするためには自らの環境設定が必要であり、それは受け入れること・勿体ないことをしないこと・仕掛けることに通じるようにも思えます。小林様の仰っていた「死への準備教育」とは何か、言葉そのもの以上の深い意味を自分なりにとらえていきたいと思います。

  4. コメント

    明日があるという思いはやはり、今日をやり切ることから遠ざけている事を先日の訪問から感じるようになりました。今日一日が二度と来ない日であるという事実から遠ざかるのは、自分の人生そのものへのコミットも遠ざかり、主体性とも遠ざかるのだと感じます。今回の学びを生かし、判断軸を作り上げていきたいと思います。

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