おかげさま

人間は感謝の中で暮らしていくことで自然の恩恵を受けることができます。これは人間関係でも同じく、御蔭様の中ではじめてお互いの存在の有難さの恩恵に気づけます。御蔭様という心は、何の御蔭で自分があるのかを忘れていないということでありそれは社會の一員である自分を自覚しているということでもあります。

相田みつを氏の詩にこういうものがあります。

『私の、このヘタな文字、つたない文章も、見てくれる人のおかげで書かせていただけるんです。〈おかげさん〉でないものは、この世に一ツもありません。みんな〈おかげさん〉で成り立っているんです』

また有名なものに『いいことはおかげさま わるいことは身から出た錆』というものもあります。おかげさまでないものはなく、全てはおかげさまであることを忘れたところから錆が出てくるというものです。

鉄製品を持っていればわかりますが、鉄は空気中の水分で必ず錆が出てきます。そのままに放置しておけばどんどん錆びついて朽ちていきます。刀なども錆びてしまえばもう輝きも消え切れないものになります。手入れをして磨き続けることで鉄は錆びません。

これを人間で例えれば、何が錆させていく原因になっているかということです。そして何を忘れると心がそうなっていくかということです。

もう一つおかげさまで有名な詩があります。私たちの会社にも玄関の近くにこの詩が掲げられています。

『夏が来ると「冬がいい」と言う
冬が来ると「夏がいい」と言う
太ると「痩せたい」と言い
痩せると「太りたい」と言う
忙しいと「暇になりたい」と言い
暇になると「忙しい方がいい」と言う
自分に都合のいい人は「善い人だ」と言い
自分に都合が悪くなると「悪い人だ」と言う

借りた傘も 雨が上がれば邪魔になる
金を持てば 古びた女房が邪魔になる
所帯を持てば 親さえも邪魔になる

衣食住は昔に比べりゃ天国だが
上を見て不平不満の明け暮れ
隣を見て愚痴ばかり

どうして自分を見つめないのか
静かに考えてみるがよい
一体自分とは何なのか

親のおかげ
先生のおかげ
世間様のおかげの固まりが自分ではないか
つまらぬ自我妄執を捨てて
得手勝手を慎んだら
世の中はきっと明るくなるだろう

「俺が」、「俺が」を捨てて
「おかげさまで」、「おかげさまで」と暮らしたい』

不平不満や文句は、自分中心で世の中がまわるのが当たり前だと錯覚しているのかもしれません。社會がなければ今の自分が今のように暮らしていくことはなく、今までの御恩がなければ今のように自分が育っていることもない。自分のことばかりを心配して自分のことばかりに執着して、自分の周りにある御蔭様に気づかなくなれば必ずその欲において自分の心から錆が出てくるように思います。

自我が強くなり、自我妄執に囚われれば自分我優先されてしまいます。そういう人が増えてしまったら感謝の循環が失われ社會が暗くなっていくかもしれません。

だからこそおかげさまを忘れないことを初心に据えることが、全てのことを福にし全てのことを転じて感謝に換える妙法だと思います。

引き続きおかげさまの磨きの旅を味わっていきたいと思います。

 

  1. コメント

    「元気そうですね-おかげさまで」「儲かってますか?-おかげさまで」あるいは、「おかげさまで合格できました」と、以前はよく使っていました。この「おかげさま」は、「誰のおかげ」かは明確にしません。どんなことにも、多くの人が関わってくれて、世間の応援や天の助けに支えられて「いまがある」という感じでしょうか。この「誰のおかげ」かを特定しないという発想が、日本人の「感謝の心」を醸成してきたのではないでしょうか。

  2. コメント

    目には見えない働きがあるのだと最近思うことが増えました。それは読経や手を合わせる他人の姿に感じ入るものがありました。「ありがとう」と伝えていても、どうしてお陰様ということがすぐに忘れてしまうのだろうと思うと、反応的に言っているだけの自分を思います。見える、見えないに関わらず詩にあるように、そして感じ入ったあの姿のように大事にしていきたいと思います。

  3. コメント

    森信三先生が師範学校の生徒たちへの講義の最初で「人身うけがたし」の話をされていることにも、今ようやくその意味が掴みかえているように思えます。手を合わせることも「おかげさま」という言葉も、なぜこんなにもと思うくらい子どもの頃の自分は無関係なものだと思っていました。どれだけの奇跡のなかで自分が生かされているのか。今、その根本の態度から見つめ直していきたいと思います。

  4. コメント

    「俺が」「俺が」の精神の時ほど、自分の損得から考えた行動や自分の評価を気にした行動になる自分がいることに気づきます。そういう時こそ、「お蔭様」を忘れている時だからこそ、心の立ち位置をもう一度整えてから目の前を向いていきたいと思います。

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