自然物というのは、同じものがありません。同じものがあるということが不自然ということです。同じものがないから同じことはできません。同じようにはできますが厳密にいえば同じにはなりません。
手工芸をはじめ、手で物を加工する職人たちはそれを自覚しています。現代は、機械で何でも同じ原料で同じものをつくることを良しとしています。同じ品質、同じ味、同じ音、何でも同じものでなければ信用問題になるほどです。しかし実際に私は法螺貝をつくり、蕎麦も打ち、石風呂などを手掛けていますが同じようになったことは一度もありません。
厳密には、空気の中の湿度が毎回同じではありません。それに自分の体調、また素材そのものの個性があります。また自分の感覚もその時々で異なりますし心の状態はとても緻密に揺らぎます。
自然物を相手にするというのは、感覚を使うということです。コンサルティングの仕事をしてきて感じたことですが、同じような組織の問題でも同じことは通じません。当然、共通する問題はあるにせよ人が異なります。場所も異なります。近い結果になったとしてもそのプロセスの組み合わせは無限にあります。
だからこそ一期一会だと、毎回、真摯に真剣勝負で取り組むのです。自然界はいつも真剣です。失敗すればリカバーできるものもあればできないものもあります。その瞬間瞬間を逃さずにいることが自然に正対するということでしょう。
昨日までの大雨が嘘のように今朝は穏やかな風と青い空と白い雲が広がっています。池の上を走ってくる風は、まるで産まれたての赤ちゃんのようです。
五感を研ぎ澄ませながら、ご縁とお導きを楽しんでいきたいと思います。