日本民家の甦生

伝統的な歴史的な家屋をよく観察しているとそれが暮らす人たちの健康を優先されて建築されていることがよくわかります。風水に照らし、間取りや配置、その風土に合致させてつくられています。

高温多湿の日本では湿気の問題は大きな影響を与えます。夏の蒸し暑さは激しいもので、それをどう乗り越えようかといろいろと工夫されています。

例えば、現在私が甦生させている町家や藁ぶきの農家古民家らは非常に風通しがよくこの時期はまだかなり家の中が寒いくらいです。この風通しがいいというのは、水が澱まずに乾燥しますから家の木材を守るためにもいいだけではなく衛生上、人間にとって害のあるカビや害虫などを寄せ付けません。世間一般ではこれらの古民家は夏向きに過ごしやすくつくられているという言い方をしますが、本来はそうではなく私は「病気にならないようにつくられている」という方が確かだと私は思うのです。

建築をするのに善い場所とは何か、今では国道からすぐとか、都市から離れていないとか、日当たりや眺めがいい、景観がいいなどというところを選ぶ人が増えていますが本来の大前提の絶対条件は「病気にならない場所」であったのです。その証拠に、まず飲み水がいいところか、風通しがいいか、土中環境が澱んでいないか、他にも清浄な空気が流れているところか、地盤がしっかりしていて自然災害が少ないかなどを優先しています。

今では、空いている土地ならどこでも環境を無視して建てようとしますが本来は一生家族が健康に過ごせるためにもっとも善い場所を選んでそこに相応しい建築を用意しようとしたのです。

つまり何が言いたいのかといえば、善い場所にある善い家とは「健康を守ることができるところ」ということです。現代では、特に都会では見た目の洗練さばかりを広告宣伝され世の中の人たちの価値観もそちらに流れています。

本来、どのような環境があることで人間が健康でいられるか。この当たり前のことをもう一度思い出し、なぜ暮らしの甦生、日本民家の甦生が必要なのかを考えてみる必要があると私は思います。

引き続き、何をもっとも先人たちが大切にし子孫に伝えようとしたのかを今、この場所から伝道していきたいと思います。

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