大気圧と法螺貝

私たちは、知らず知らずに大気圧の中で暮らしています。地球には大気がありその大気の重さ圧力が全身にかかっているという具合です。これは海で考えてみてもわかります。海に潜れば水圧がかかるように、地上にいる私たちにも、頭上にある大気の重さによって「大気圧」がかかるのです。

その大気圧は海面付近であれば約1013hPa。これは手のひらほどの面積にも、およそ100kg重に相当する力がかかっているほどの圧力です。大人の私たちには約18000kg重ほどかかっているという計算になります。

想像したらすぐにわかると思いますが、瞬時につぶれてしまう重さです。

空気も水でできていますから、巨大な海の中にいる状態と同じです。

しかしなぜこの重さがかかっているのに人間の身体が押しつぶされないのか。それは身体の内側にも圧力があり、外側の大気圧と「釣り合う」からです。

この釣り合うという状態こそ、大気圧と調和する状態です。人間の身体では、外から圧力がかかりますが内側からも圧力がかかります。

大気圧はまず上から押しつぶすのではなく前後・左右・上下、あらゆる方向からほぼ均等に作用します。それに対して人体の多くは水分でできていますがその血液や細胞内外の液体、組織などにも圧力が伝わっていて、外からの大気圧とほぼ釣り合う状態になります。

これは空のペットボトルを密閉して外側の圧力だけを強くすると潰れますが内側にも同じ程度の圧力があれば潰れないのと同じ仕組みです。

ただここに圧力差が生まれると、それを修正しようとして変化が生まれます。例えば、飛行機で耳が痛くなるのも、この圧力差が一時的に生じるからです。釣り合わないから発生するという現象です。

常に釣り合った状態でいるから、こんなに重たい大気圧を普段は感じないのです。

呼吸はこの大気圧を活用して行われます。胸を広げて肺の中の圧力を少し下げると、大気圧によって空気が肺へ入ってくるという具合です。つまり吸う力で呼吸をするのではなく、内側と外側の圧力差を利用して呼吸をしているのです。

この圧力差の微細な差を産み出すことで、呼吸をしています。

そして法螺貝も同じ仕組みを使っているのがよく分かります。まず法螺貝を吹くことは、大気圧との「圧力差」を利用して音を生み出していく法具です。息を吸うとき、胸郭を広げて肺の中の圧力を大気圧よりわずかに低くします。すると、外の大気が肺の中へ流れ込みます。反対に法螺貝を吹くときは、呼吸筋を使って肺や口の中の圧力を大気圧より高くします。その圧力差によって空気が外へ押し出され、唇が振動します。

その振動が法螺貝内部の空気に伝わると、空気は細かく圧縮と膨張を繰り返します。これが「音波」です。法螺貝の内部では、その形に応じた共鳴が起こり、特徴的な強い音となって外の大気へ広がっていきます。つまり法螺貝の音とは、単に強く息を吐いた音ではありません。

大気圧を基準に身体が小さな圧力差をつくり、それが唇の振動、法螺貝の共鳴を経て、大気中を伝わる「圧力の波」になったもので音が出ているということです。

普段は感じることのできない大気ですが、法螺貝を吹くことで、その大気が振動し、音として私たちの耳に届いているのがわかります。

私たち法螺貝を吹くものたちは、常に大気の流動や変動、気圧や振動を調えることで場を調和させることを実践しているとも言えます。

法螺貝の音は、まさに螺旋の響きですがこの螺旋の響きそのものが宇宙の振動と共鳴していきます。

呼吸を修めることは、大気圧を修めることです。

引き続き、精進していきましょう。