現在、守静坊の薬草園には色々な薬草を移植していますが漢方では黄精と呼ばれるナルコユリやアマドコロを育てています。もともとこの黄精は、中国で仙人の食べものとして不老長寿の薬として栽培されていました。
この植物は本来は中国のカギクルマバナルコユリのことを指します。日本では近縁種のナルコユリと呼ばれました。漢字では「鳴子百合」と書きます。これは花が並んで下垂する様子を田畑から害鳥を追い払う鳴子に例えて命名されたものです。
この鳴子というのは今は見ることはありませんが、田んぼで野鳥たちがお米を食べないように四方に竹を差し込み、そこに縄で結び音の鳴るものをつるして揺らして害獣除けなどに使ったものです。そのぶら下がっている鳴り物の様子が、似ていたということです。
黄精の名前の由来は根っこが黄色いことや、精力が衰えたときに物が黄色に見える(かすんで見える)のを回復させる薬という説もあります。この黄精は「滋陰薬」と呼ばれます。これは陰液を強めて栄養を与える薬になること。別の言い方では養陰薬または補陰薬ともいえます。この陰液とは人体の水分や血液、筋肉、脂肪などの潤いのある部分のことをいい、それを補い調和させるという効果があります。薬ですから摂取しすぎると副作用もあるといいます。
またナルコユリとよく一緒に紹介される植物にはアマドコロがあります。このアマドコロの根茎は玉竹という生薬になります。
とても似ていて、見分けるのが難しいものですが一般的には同属植物の大型の根茎を「黄精」とし、小型のものを「玉竹」としているそうです。黄精は脾や腎を補うのに対し、玉竹は肺や胃を潤す働きが強いといいます。姿形は似ていても、効能は異なりますからやっぱり別の植物ということです。根茎の味の甘いものが良品とされ、苦味を呈するものは薬用に向かないそうです。
また生で服用すると咽の刺激が強いため、蒸した熟黄精(じゅくおうせい)で利用します。蒸すと色が黄色ではなく黒になります。
宿坊で、修行者や訪問者の病気を治癒するのに育てていますがまずは私が色々と試して暮らしの中での新しい取り入れかたを甦生していきたいと思っています。
仙人がなぜ仙人たるか。
子孫のためにも色々とお山の暮らしを味わっていきたいと思います。