法螺道の加減

匙加減がわかるという言葉があります。この匙(さじ)とは、薬などを調合するときに使うスプーンのことです。分量次第で色々と効能も変わりますから、相手に合わせてまた状況や症状で適切にできる加減のことです。

この加減という言葉は、調整、調律、具合なども意味が近いものです。加えることと減らすこととありますが、これは力の調整、調律、具合などを合わせるということです。

例えば、物体であれば壊れやすいものや薄いものなどは特に丁寧に力を加減します。その逆に頑丈で強いものも力を加減します。弱いものから強いものまで、相手に合わせてその力の使い方を変化させるのです。

これは当たり前のことを言っているようですが、実際には物体によって個体差があります。同じ紙でもすぐに破れるものもあれば、とても強くて破れないものがあります。相手に合わせて、紙への接し方も変わります。見た目が同じ紙だからと、同じようにやるとなかなか加減が分からずにうまく扱えないものです。

道具というのは、相手の素材に合わせて使い分けていくものです。和包丁などは、素材に合わせて使い分けます。同時に使い手もその素材の性質を知り、力加減を絶妙にしていくのです。

現在、法螺貝の吹き口をつけ調律を学んでいますがこの加減というものの奥深さや難しさに直面しています。法螺貝そのものが持つ可能性を探っていくには、その貝の素材の性質を深く洞察し理解できないといけません。同時に、その法螺貝で出せる音を見究めるために様々な呼吸や吹き方を試していく必要があります。

先ほどの和包丁のように素材を扱う側も自分の身体の扱い方も両方が上達している必要があります。自然物というのは、なるべく余計なことをしないでいのちを壊さないようにした方が鮮度も保ち、徳を穢しません。

どれだけの加減を見究めるか。何でも同じことばかりしていたら、いい加減うまくいかないときに気づくものです。しかし人間は、加減を學ぶのはたくさんの経験や失敗を通してです。

私も古民家甦生をしてから恥ずかしいほどにたくさんのものを壊したり傷つけてきました。その都度、深く反省し失敗から学び、配慮するように生き方を磨いていきました。自分の方の扱い方を変えることの連続です。しかしその御蔭で、素材のことを深く知り、素材の性質や徳性を知り尊敬の気持ちも増えていきました。

法螺貝の道もまだまだ入り口、法螺道を真摯に向き合い螺旋からその好い加減を学び直していきたいと思います。