香と徳

ここ数年、お香のことを色々と深めています。お香は奥が深く、音と同じようにその時の湿度や空気、環境や心境で様々に変化します。

中国・北宋時代を代表する詩人で書家の黄庭堅、お香の有用性や優れた特性を40文字で詠んだものに「香十徳」といいます。これを弘めたのは室町時代の一休宗純の書になります。

そこには、こうあります。

感格鬼神  感は鬼神に格(いた)り
清淨心身  心身を清浄にし
能除汚穢  能(よ)く汚穢(おわい)を除き
能覺睡眠  能(よ)く睡眠を覚し
静中成友  静中に友と成り
塵裏偸閑  塵裏(じんり)に閑(ひま)を偸(ぬす)む
多而不厭  多くして厭(いと)わず
寡而為足  寡(すくな)くして足れりとす
久蔵不朽  久しく蔵(たくわ)えて朽ちず
常用無障  常に用いて障り無し

これはお香の持つ徳の力を文書にしたものです。意訳をすると、「お香は感覚を研ぎ澄ませ、心身を清浄にして穢れを取り除く。また眠気を覚ましてくれて忙しい時にも静かな心でいることができます。多くて困ることは一切なく、少なくても薫りは変わりません。日常的に使っても飽きがこず、長期保存もできる優れものです。」といった感じでしょうか。

私は朝晩は必ずお香を焚き、後は場づくりするときや来客時、瞑想や心を落ち着かせるときに用います。好きなお香もありますが、その時のイメージで香りを使い分けています。

この香りは心を密接に結ばれていて、香りと心の状態は常に影響しあっています。ちょうど、昨日は真菰を育てている伝統職人のところにお邪魔しましたが部屋中が真菰の香りで充たされていて何時間でも滞在したい気持ちになりました。

香りは生き方と繋がっています。

薫陶や薫習という言葉もありますが、香りはそれだけ私たちの生き方にも大きな影響を与えているのでしょう。まさに徳の顕現する一つがこの香りです。

引き続き、香りを深めつつ、いつか真の香りを伝承できるように精進していきたいと思います。