時の知恵

動物や植物たちは人間の持っている時間というものがわかりません。自然のリズムに従って活動し休みます。毎朝、早くから鳥たちが活動して夕方に巣に戻ります。季節の変化で、大風が吹いたり雨が降ったりするなかでそれぞれのリズムで活動を続けます。

自分の居住区域には縄張りがあり、餌場がありますからその環境の変化や餌を共にする存在は脅威になります。自然と共生するなかで環境が変わるというのはそれだけで大変なことです。

現在、人間社会はスケジュールというものに大きく管理されます。毎日忙しく、空いているところに次々とやることを入れていきますから時間に追われる日々を送ります。時間を増やすために如何に時間を短縮して作業ができるかを考えだし、様々なものを合理化していきました。

例えば、炊飯ジャーや電子レンジなどもその一つです。コンビニというものも忙しくなってしまった現代人が簡単便利に合理的に生活が済むように商品が陳列しています。お金さえあれば、時間すらも買える時代になっているというような錯覚が得られるものです。

実際には、食事でいえば食は本来は薬です。医食同源という言葉もありますが、むかしは生きていくために日々に養生を兼ねて食に気を付けました。食べ物はまさに健康のために旬のもの、丁寧にいのちをいただいてきたのです。

不思議なことですが大金をかけて便利で合理的な道具を使い、スピード重視でできあがる食べ物を求めては病気が増えています。見た目ばかりよいもの、添加物で似た味付けになっていれば美味しいものになっているのです。

美味しいものというのは、身体が求めているものです。人間の身体は自然が形成したものですから、自然の循環に適うもの、自然のリズムに適うもの、自然の火やお水、プロセスを経たものが美味しいものです。しかし現代は時間短縮を優先するという前提があるからそれを省いていくことに経済を使っているように思うのです。

子どもたちは今、どれくらいゆったりと時間を忘れて食事をする場があるでしょうか。朝から急いで朝食をとらせ、お昼も給食や集団で一気に食べ、夜もやることがたくさんありますからスピーディに食べては残りの時間を惜しんで過ごします。そんなにやることばかりを増やしていったら、ますますスケジュールに管理されますがそれが当たり前の世の中になっているのです。

幼い頃から大人の忙しい生活を押し付けられて育てば、それが社会に出ても同じような生活をしていきます。経済を繁栄させるためにとスケジュールをさらに詰め込みますが、本当の豊かさはスケジュールとは関係がないところにあることに気づきます。

自然から学ぶと、私たちは自然がもつ空間に悠久の時があることに気づきます。そこには時という知恵があり、記憶という豊かさがあります。子どもたちにも幼いときに、人生の真の豊かさを自然から学んでほしいと願います。

暮らしフルネスの実践がどのように花が咲くかわかりませんが、子ども第一義の理念をカタチにしていきたいと思います。

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