マネジメントとは何か

「マネジメント」という言葉があります。これは社會生態学者を自称するピーター・F・ドラッカーが発明した言葉です。昔はこのマネジメントの意味を誤解する人が多かったように思いますが時代が追い付いてきてこの「人々の衆知を活かす智慧」ということの大切さが次第に伝わってきているように思います。

人は如何に持ち味を活かし合って協力し、智慧を働かせていくかということの中に真の組織変革と成熟があるように私は思います。この智慧を働かせるという言葉がナレッジマネージメントともいうと思いますが智慧を働かせ続けるには人々が互いに一つの理念に対して協力していく必要があります。

以前、経営か理念かどちらが大切かとある人に問われたことがありますが本来は理念が経営することであり経営は理念を実践する中ではじめて姿を顕すものだと答えました。これはそもそも経営理念という言い方ではなく、「理念経営」という言い方をし、つまりは「理念を優先することではじめて経営が成り立つ」ということで理念経営という言い方をするのです。そしてこの理念経営を行うことがリーダーシップの本質であり、その理念経営を分析して言葉にしたのがマネジメントであると私は認識しています。

もうドラッカーは亡くなっていて私の解釈と同じかどうかは確かめようもありませんが、ドラッカーの遺した言葉の中にはマネジメントをしていく上で何よりも大切なことを記されています。そしてそれはすべて理念経営を実践する中で自ずから発生してくることばかりですから同じことを目指していたように思います。

『組織に働く者は、組織の使命が社会において重要であり、他のあらゆるものの基盤であるとの信念を持たねばならない。この信念がなければ、いかなる組織といえども、自信と誇りを失い、成果をあげる能力を失う。』

『「過去のリーダーの仕事は「命じること」だが、未来のリーダーの仕事は「聞くこと」が重要になる。』

『何事かを成し遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。できないことによって何かを行うことなど、到底できない。』

『これからは、誰もが自らをマネジメントしなければならない。自らを最も貢献できる場所に置き、成長していかなければならない。』

『他人の短所が目につきすぎる人は、経営者には向いていない。長所を効果的に発揮させるのが自分の仕事だと考える人が、有能な経営者になれる。』

『知識労働の生産性の向上を図る場合にまず問うべきは、「何が目的か。何を実現しようとしているか。なぜそれを行うか」である。手っ取り早く、しかも、おそらく最も効果的に知識労働の生産性を向上させる方法は、仕事を定義しなおすことである。とくに、行う必要のない仕事をやめることである。』

『知識労働者が貢献に焦点をあわせることは必須である。それなくして、彼らが貢献する術はない。知識労働者が生産するのは、物ではなくアイデアや情報やコンセプトである。知識労働者は、ほとんどが専門家である。事実彼らは、通常、ひとつのことだけを非常に良く行えるとき、すなわち専門化したときのみ大きな成果を上げる。それだけでは不毛である。専門家の産出物は、他の専門家の産出物と統合されて初めて成果となる。』

経営をするという言葉は、別に利益を出して会社を上手く成長させていくという意味ではないことがすぐにドラッカーの言葉から伝わります。人間がマネジメントとするというのは、本来の崇高な理念に対して人々のチカラを結集し皆を仕合わせにしていくためにどうあるべきかということに焦点を当てているように思えます。人格を高めることや、人々の持ち味や個性を発揮していくことは強みを伸ばすことであり、何をもって強みというか、それは皆の持っている「持ち味」のことであるのは明白です。

そしてこの持ち味を活かすためには、持ち味を活かそうとする人格者、つまりリーダーの存在が必要でありそのリーダーが目指す理想の社會の実現に向けてどう衆知を集めるか、つまりマネジメントが必要なのです。

マネジメントを実践するのがリーダーですから、如何に善い会社にしていくかはその会社の理念にどれだけ真摯に正対して実践を皆で積み重ねていくかに由るように私は思います。

ドラッカーの遺した言葉にあるものは、ほとんど自社内でやり方を発明しすでに様々なカタチにして日々に実践していることばかりです。改めて思えば、経営は経営学が先ではなくマネジメントすることが何よりも優先なのです。

時代が変わっても人間の本質は変わっていません。どんな時も大道や本筋がありますから、それに沿って時代時代に温故知新し経営のやり方も発明していくことで本来の姿を取り戻していくように思います。世の中の経営者はより優れたマネジメントをする人物をベンチマーキングし素直に吸収していくことが何よりも大切になっていきます。

変化の中で変化を機会と捉える感性は理念経営によって養われます。そして理念経営のプロセスの中で新たなマネジメントに出会うことは、正しい物事や正しい判断に近づていく人格経営、社格経営の成熟の証です。

引き続き、子ども達の未来のためにもマネジメントを深めていきたいと思います。

 

  1. コメント

    「理念」を実現しようとすると「経営」が難しく、「経営」を優先すると「理念」を忘れてしまうというところが、現在の多くの経営者の課題でしょう。しかし、この矛盾に見えることのなかに「人を真に生かす」ヒントがあるようです。「貢献に焦点を合わせる」というキーワードこそ、理念マネジメントの智慧ではないでしょうか。

  2. コメント

    子どもにとってどうか、その軸のお陰で今があることを思うとありがたいことです。ブレそうになっても理念が拠り所になり、戻れるところ、みんなで同じように考えられるのは理念あってのことなのだと感じます。関わり方を変えると知らないことが次から次へと出てきます。何でもっと前からしていなかったのだろうと気付くと思いますが、今がそのタイミングで気付けたことに感謝し、実践していきたいと思います。

  3. コメント

    与えた分だけ与えられ、譲ったものが譲られるというということを昨日は振り返りの中から学ばせて頂きました。先に得ることを求めるのは天の道理に合わないことは頭では簡単に理解できますが、この感覚を体験の中で身に付けていきたいと思います。自分自身がこの環境の中で何を体験させていただいているのか、仕事ではなく生き方であることを改めて自覚し、お客様へ世の中へと還元していきたいと思います。

  4. コメント

    リーダーとして、命令ではなく聴けること。短所ではなく長所を活かすこと。まずは自分自身のリーダーであることを自覚し、マネジメントをと思ってしまいますが、分け隔てなく、来るもの全てに挑戦し実践し続ける勇気を持ち続けたいと思います。

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