老舗の魂

ここ数日、ご縁のある老舗の方々とお会いする機会がありました。どの場所も、どの人も、何を変えて何を変えないかがはっきりしておられました。不易と流行ときちんと見定めて次世代のために、いや数百年後の未来のために何か置き土産を譲り残していけないかと真摯に精進されておられました。

そもそも長く続くということはどういうことか。それは継続することが最も大切なことになっていることは明らかです。経営者には色々な方々がおられます。一代で大成功することを目指す方、あるいは拡大し世界のマーケットを獲得することを目指す方、競争して一番を目指す方。資本主義経済の中では、経済をどれだけ活性化するかが目的になっていますから色々な方がおられます。日本では、100年以上続く会社が世界一多いといわれます。隣国の中国では2代続くところはほとんどないそうです。

最初から何を目的にしているか、そこに民族性や生き方がなどが関係していることがわかります。日本は島国で、自然が豊富で気候の変化、災害など多くを有します。だからこそ、瑞々しい感性と同時に自然への畏敬など謙虚さや素直さなど、生き残るために代々磨いてきた徳目があります。

その風土の影響を色濃く受けて、正直な人間性が育ちお互いを信じあい助け合うという文化が醸成されてきたともいえます。

もともと商売とは何か、そして暖簾とは何か、そこに共通するものがあることに気づきます。一つは信用です。嘘をつかず約束を守り言行一致に取り組んでいることは、他人からの信用を得られます。その信用が商売の繋がりや結びつきになり、お互いに助け合うときの絆になります。商売人の基本は、信用されるということでしょう。信用されるには、自他との信頼を築き上げるために努力していく必要があります。

またその信用を守り続けるには自分を変化させていかなければなりません。同時に会社や組織も変化が必要です。なぜなら、そうでもしないと約束が守れなくなるからです。

例えば、私の場合は子ども第一義という理念を掲げ、子どもたちが安心して楽しく夢をもって主体的に歩めるようにまずは私たちが子どもの周囲にある会社として、純粋に子どもが憧れる生き方や働き方を目指そうと取り組んできました。この子ども第一義とは、大人か子どもかではなく、常に子ども心であり続けるという意味でもあります。

そうなってくると、現実世界の割り切ったものを問い直し、刷り込みを取り払い、常識を毀し、生き方と働き方を見つめ直した暮らし方まで改善していく必要性が出てきます。理想論ではなく、実践として理想に近づけていくという努力と精進がはじまります。掲げた理念に取り組むことは、挑戦をし続けることです。どんなに周囲の環境が理想とはかけ離れていても諦めずに場を磨き、調え、そして理想に近づけるために困難を乗り越えて環境のせいにしない覚悟を定めます。あとは、誤解されても理解されなくても丁寧に信念に従って一つ一つ正対して歩み継続していきます。

気が付くと、何が仕事なのかもわからないほどに一般的な会社や仕事とは言い難いものにもなっていきます。しかし、純粋に子ども第一義を目指して取り組んでいることは仲間をはじめ家族には伝わっていくものです。誰かからどう見られるかを気にする暇があるのなら、自分が一番自分を観ていますから自分に正直に約束を守り続ける努力の方が悔いもありません。

そうやって初代の人が約束したものを次の代の人がまた自分に正直に守り続けて挑戦を已めないでいる。それが老舗の魂なのかもしれません。

まだまだ学び直すことはたくさんありますが、ご縁に感謝して変化を味わっていきたいと思います。

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