最近、線状降水帯という言葉をよく聞くようになりました。これは予報の科学的技術の精度が上がったこともありますがこの20年ほどで豪雨の質量が約2倍以上になったこともあるといいます。
私の故郷は遠賀川をはじめ英彦山からの本流域の中にあり、川の近くにいるからか大雨洪水は感覚的に危険だと幼い頃から怖れていました。最近は宿坊に滞在することが多く、お山のバケツのような雨に下流がとても心配になります。
英彦山は九州では非常に珍しい三分水嶺です。北西へ流れる水 は 遠賀川から響灘へ。北東へ流れる水は今川から周防灘へ。南東へ流れる水は山国川から周防灘へ流れます。
修験者たちはこの水の流れが四方に流れる様子にいのちを観ていたといいます。
それが谷ごとに神仏がいると信じられ、それが大切な修行場となりました。いのちが産まれる場所をどう調えていくかが、修験者たちの使命と役割だったのではないかと私は思います。
谷ごとに如何にお水を調えて、下流へ穏やかに流れてもらうか、そして海に豊かで穏やかな状態で届けるか、そこには場を清め調えるという大切なお役目があったように思えて仕方がないのです。
なぜなら宿坊は、谷にありお水を見守るように建っています。お水が穢れないよう、暴れないようにと場を調えているのが宿坊とも言えるからです。だからこそ、谷ごとに神仏が設置され、修行場が存在していたように思います。
鎌倉時代に編纂された『彦山流記』には四十九窟(修行窟)が明記されますが江戸時代にはさらに多くの谷が修行場として利用されるようになったとあります。英彦山一帯には大小合わせて三百を超える谷があると伝えられ、やはりここでも「谷ごとに神あり、水ごとに仏あり」と伝承されてきました。
私たちの谷は、弁財天が祀られます。神様としては瀬織津姫です。この時季、英彦山はお水に包まれまるで水中にいるかのようです。
豪雨災害が増えたからこそ、修験者たちのいのりや場づくりは今まで以上に大切になります。丁寧に暮らし、お手入れをして調和していくようにいのりを実践していきたいと思います。
