この数日、アメリカから求道者が来坊され英彦山で修行をするお手伝いをさせていただきました。私は、暮らしの中で験力を磨きますから一緒に田植えをし炭火をつかって湯豆腐などを食べ、おむすびを共につくり、英彦山へ送り届けました。
彼はアメリカで鍼灸師をし、またあらゆる施術やきのこなどを用いた自律神経を調え心を癒す治療を行っています。メキシコのシャーマンとパートナーで、護摩焚きや山岳修行などを行っているそうです。
宿坊の作務をし、参道の道端のゴミを拾い、英彦山の山頂へと歩き、その後は英彦山のお水が湧く場所を祈祷してまわりました。彼が持っている法螺貝は、日本の海にあるホンビノス系の法螺貝ではなくカリブ海の大巻貝のクイーンコンチでした。Lobatus gigas(旧名 Strombus gigas)といいます。最近、日本でもピンク法螺貝といって女性に人気が出ているともいいます。
私がつくる吹螺の法螺貝は、日本の修験者が持つテングニシ科の大型巻貝、Triton’s trumpet(トリトンズ・トランペット)といい学名ではCharonia tritonisとも呼ばれるものです。
このテングニシ科の「テングニシ」という名前は、長く伸びた螺旋状の殻、先端へ向かって尖る形、大きく立派な姿が、昔の人には「天狗の鼻」のように見えたことに由来するといいます。
次回、来日する際にはこのテングニシ科の法螺貝を持ちたいと仰っていました。
お山の中で法螺貝を吹き、祈り、歩く。
それだけで人間は色々なものがそぎ落とされ、本来の自然体の感覚が甦生してくるものです。
極端な修行も感覚が目覚めますが、そうではなくてもお山で静かに暮らしているとあらゆる感覚が甦生してきます。それだけ都会や下界の環境は感覚を鈍らせ、頭でっかちに生活させるような仕組みになっているものです。
験力というものがありますが、これは修行によってられる本能の力のようなものです。
直感が冴えわたり、自我が調和し、思考が透明になり心が落ち着きます。
いのりが天に通じやすくなり、運氣が高まります。
人生の節目に、霊峰に来て祈り歩く。
この行為は、太古のむかしから人類が忘れてはいけない初心を思い出すための智慧としてこの時代にまで伝承されてきたものです。そして田を耕し人が天地と結ばれるように、山を歩くことで天地と人が結ばれます。
山伏の本来の本志は、「結徳の実践」ともいえます。
お山と人を結ぶ、天地を結ぶ、山と海を結ぶ。
それが私が五百羅漢の法螺貝を英彦山で伝承し続ける理由です。
至誠は天に通じます。
それは結ぶことからはじまるのでしょう。
日々の法螺貝の音を響かせながら、お山に深く入っていこうと思います。
