毎月、満月に英彦山でご祈祷をしお水を汲んで不老園を煎じています。御蔭さまで満月に合わせて生活リズムも調えることができます。常に月を意識して生きることで、心の動きを内省していくことができます。
古代より、人類は夜空の月を眺めて暮らしてきました。今では、ネオンが明々とし月を眺める機会も減っているものです。電気がない時代、暗闇が包んでいた時代は星空の中に一際、光を放つ月の存在感にいつも人類は癒されていたように思います。
日本では昔から、お月さまとお水は特別な存在として扱われたものです。この二つはどちらも汚れを洗い流し、心身を清め、甦生する象徴となりました。満月は、欠けていたものが満ちた状態であり、「完成」「調和」「再生」の象徴ともなりました。このお月さまとお水の共通点は、清めや癒し調和です。またどちらも鏡のように徳を映す性質があります。澄んだ夜空のお月さまやお水は、透明な心を澄ませる偉大な場づくりをしてきました。
英彦山で満月にお水を汲むのは、そのお水が太陽と月と地球の調和の波動が場に宿るからです。宿坊のある清らかなお水が溢れる谷は、一年中、水氣を浴びています。それだけお水の変化を感じやすく、空気をはじめ場がその時々のお水の状態を映します。そしてお水の変化が光の多様性を感じさせ景色を一変させます。お水と月の光の調和は、心の奥深いハタラキを映し出します、
東洋の医書、『東医宝鑑』では水の性質によって薬の効き方や身体への作用が変わるとし33種類の水(三十三水)があるといいます。特に薬草づくりに善いものは、井華水
、寒泉水、甘爛水、千里水(長流水)です。
これに満月の日のお山で井戸から湧くお水として新たに一つ追加し「月泉水」と命名しました。この霊泉を使い生薬を土鍋で8時間かけて抽出することで不老園は出来上がります。
そもそも科学的に証明されるものはこの世の中の数パーセントですから、実際には先人の智慧や叡智の方に不思議な霊験は宿っているものです。また現代では月を日々に意識することもありませんから暮らしを調えていくのに、月の女神と薬草の力を使っていくというだけでも十分に静かに過ごし、感謝で生きる環境が醸成されて自然のリズムに自分を合わせる助けになります。月の周期で生きるだけで、心が穏やかになっていく、また霊山のお水を身体に入れることでそのお山の清々しさや浄化を感覚で取り込んでいく。生薬は修験ではお山の女神の恩寵の一つで、植物たちの徳を活かす象徴です。
人間もまたその身体はお水でできています。お水が1パーセントなくなっただけで心身は不調になります。お水は単なる物質ではなく、いのちそのものです。だからこそそのお水を調えることで病気を未然に防ぎ、養生をしてきたのが先人の生き方だったのでしょう。
暮らしを調えることは、お月さまのリズム、そしてお水を大切に扱っていくことからはじまります。
不老長寿の妙薬とは、その自然との調和をする生き方だったのかもしれません。引き続き、丁寧に暮らしを調えて人々が安心して暮らしていける世の中を脚下の実践からはじめていきたいと思います。
