原理と先生

長い歳月、修練を積んでいると肩の力が抜けていくものです。無理をせずに、少しだけの力の入れ方でコツがわかるという具合です。まるでむかしの大工工具のくぎ抜きのようなものに似ています。この釘抜きは「座金」と「梃」の2つの道具を合わせて使うものです。

くぎ抜きと言えば、私の家の代々の家紋は丸にくぎ抜き紋です。このくぎ抜き紋の由来は、クギヌキの音が「九城を抜く」に通じて、縁起が良いことによるといいます。そして武将達はこの紋にあやかって武功を立て立身出世し家を繁栄させようと願うことからともあります。「釘を打つ」という言葉に「敵を討つ」を重ねたということもあるそうです。また門の閂(かんぬき)や墓地を囲う柵を釘貫ともいい、邪を退ける結界の意味もったといいます。

くぎ抜きの仕組みは、てこの原理を使います。これも大工の智慧の一つで力学の王道です。具体的には重い物を「小さな力で動かす」ことができる法則のことをいいます。支点から作用点までの「距離」と作用点の「重さ」を掛けた値が支点から力点までの「距離」と力点に作用する「重さ」を掛けた値が等しいということ。

身近でも、栓抜きやシーソー、あるいはスコップなど私たちはこのてこの原理を使って重いものや力がいるものを上手に扱っています。

特別な力がなくても、このてこの原理のようにコツを掴めば簡単に問題を解決することができます。若い時や力が有り余っているときはこのてこの原理など使わなくても、力業で乗り切っていましたが経験を通して余計なことをしないでも楽に力を発揮することを學ぶのです。その方が、無駄な力や無理がなく、スマートに美しく力を発揮できます。

これは力だけではなく、仕事や生き方などでも反映されていくものです。

くぎ抜きもまた、その原理を学ぶ先生でもあります。我が家の家紋に恥じないように、引き続き力を磨いていきたいと思います。